三、純潔を散らされる十三歳、輪姦される十九歳




 約1時間後、上村達は別荘へと戻っていた。
 理緒は、股縄に細いチェーンをつなぎ止められ、それを引っ張られるようにして上村達に連れ回されていた。
 もはや、完全に人間以下の扱いしかされていない。
 3人が戻った時、居間に浅野と河村の姿はなかった。香里はカーヴに閉じこめているのだろうが、仲間の姿が見えないことには合点が行かなかった。
 この洋館は部屋数が十五ほどあり、無分別に使っていたのではかえって勝手が悪い。1室1室が広いこともあり、彼らはこの居間1室で過ごすようにしていた。
 あちこち探し回り、ようやく浅野達の姿を発見した。
 彼ら2人は、寝室で香里の肉体をずっと犯しまくっていた。
 「姿が見えないから焦ったぜ…、なんかあったんじゃないかと思ってよ…」
 茂原が、香里を背後から犯している河村にそう声をかけた。
 「ただ…、待ってるのが…退屈だったんだよ…」
 河村は平然と激しく腰を突き上げながら答える。その都度激しく反応する香里とは対照的だ。
 理緒は呆然と、激しくよがり狂う香里の様子を見ていた。普段の上品な物腰はどこへやら、本能むきだしで快楽だけを求めている。いままで理緒が見たことがない一面であった。
 それは、奇妙に少女の身体の芯を刺激した。股縄が喰い込んだ秘肉がやけに熱く感じる。
 「始めてどの位だ?」
 「…う〜ん、もうかれこれ3時間くらいかな…。この女、もう十回くらい連続してイキッ放しだ」
 確かに、香里の肌は自らの汗と牡の体液、唾液、汗にまみれ、まるでローションを塗りこんだように下品に濡れ光っている。
 何度目かの放出を果たし、ようやく浅野と河村は香里を凌辱から解放した。
 香里は、そのまま失神し、ベッドの上で力無く横たわっている。いったい何回その極上の女体に、精液を注ぎ込まれたことだろう。
 その部分からは白濁液が容赦なくトロトロとあふれ出し、手足は断末魔に近いがごとく、時折思い出したようにヒクつくような痙攣を繰り返している。
 「それで、そっちの方の首尾はどうだったんだ?」 
 河村がハダカのままベッドの端に腰をおろして、そう上村に尋ねた。上村は事の一部始終を包み隠さず話した。
 「なるほど…。藤野のヤツらしいぜ。で、今後の展開をどうする?」
 上村は口元を手で隠した。それが、何かを考えるときのこの男のクセだった。
 「…とりあえず、藤野への復讐の第1幕は終わったって事ですよね。アタマを切り替えて、第2幕にかかるとしますか…」
 「この際だから、理緒の処女喪失シーンを撮ってビデオを送りつけるってのはどうだ?インパクトあるぜぇ!」
 茂原が意気込んで言った。理緒がビクッと身体を震わせた。
 「おい、あんまり個人的趣味を出すなよ」
 浅野が苦々しげに釘を差した。にわかにその場の雰囲気が悪くなる。
 「待て待て、みんな冷静になろうぜ。俺らの目的は何だ?藤野のヤツに復讐してやることだろう?」
 河村が言い、全員が頷いた。
 「そのために、ヤツがもっともダメージをくらう事って何だ?」
 「…スキャンダルに…巻き込まれること…」
 上村が呟いた。 
 「そうだ。そうすれば、全国的に恥をさらすことになる。上手くすれば、CMなんかの仕事も減るぜ。かなりのダメージになるはずだ」
 「だが、生半可な方法じゃ、ヤツの事務所から圧力がかかって握りつぶされるのがオチだ」
 「いい方法がありますよ。マスコミが絶対に無視できない方法が…」
 上村がぼそりと呟いた。
 



                                  *





 翌日、理緒は車に乗って外へと連れ出された。
 今日は服を着ることを許されていた。どこから持ってきたのか、理緒が身に着けているのは、袖やエリに可愛らしい刺繍を施した白いブラウス、その胸元をループタイで引き締め、下は目にも鮮やかな真っ赤なフレアスカートに紺のハイソックスと、完璧に茂原の好みの格好をさせられていた。
 車は山道を十分ほど降りて、中腹で停まった。上村を先頭に理緒と茂原、浅野、河村の5人は車から降りて、茂みの中へと分け入っていく。
 うっそうと茂った森の中は、本来人が入る場所ではないのだが、あらかじめ道が踏み分けられていた。事前に切り開いてあったらしい。
 十分ほど歩くと、不意に目の前が開けた。地面から真っ直ぐに空に向かってのびる杉の大木が立ち並ぶ中、深い森のそこだけぽっかりと空間が出来ている。
 そこに、ぽつんとベッドがひとつ置かれている、まるで、童話の中の光景だ。
 「さあ、いくぞ、理緒」 
 茂原が背後から理緒の両肩をぐっと握った。すでに呼び捨てである。彼にとって、理緒は愛玩物以外の何物でもない。それを、おおっぴらに自由に出来るのだからこたえられない。
 理緒の表情が凍りつく。これから何が起こるのか薄々感づいているためだ。
 少女の軽い身体を腕に抱き上げる。ひしひしと怯えが伝わり、それが逆に彼の興奮を高める。
 まるでぬいぐるみの人形を扱うかのように、乱暴にベッドめがけて放り出す。少女の身体が宙を舞い、ベッドに着地する。
 スプリングが効いて、理緒の身体が幾度もその上で弾む。
 「オトナにしてやるよ」
 ぼそりと呟くと、自分のシャツのボタンに手をかけた。
 「ひぃっ…!嫌ッ…!」
 火が点いたように、理緒は恐慌状態に陥った。当然、この場から逃げだそうとするが、周囲を複数の成人男性に囲まれていては、無事に逃げおおせる可能性は万に一つもない。
 そこへ、ブリーフ一枚を残して着ているものをすべて脱ぎ去った茂原が立ちはだかった。
 「これは罰だ。俺達の要求を無視した藤野に対するな…。お前には何の罪もないが、犠牲になってもらうぜ」
 理緒を犯し、調教して、前代未聞のロリータSEX奴隷を造り出す。それが彼らの目的であった。
 藤野が次に理緒の姿を見る頃には、少女は自ら鼻を鳴らして肉棒に舌を這わせ、甘い声をあげて幼い淫裂に男の肉棒を自ら受け入れる、性欲の奴隷となっていることであろう。
 茂原はベッドの上に乗り、震える理緒を優しく寝かせてその上に折り重なった。
 舌なめずりをしつつ、陶器人形のようにととのった理緒の顔にぐっと顔を近づけ、そして不意にその唇を奪った。
 「ムッ…!ンッ…!」
 強力なバキュームのごとく、茂原の厚い唇が少女の口を吸う。 そのあまりの強力さに、理緒の花びらのような唇が次第にほころんでいく。その奥に隠された、柔らかな舌さえも吸い出されていく。そこへ、茂原の舌が絡みつく。必死に逃げる少女の舌をからめ取るかの如く動き、独立した生き物のように絡み合う。
 「うっ、ムゥン…!」
 理緒は泣きそうになっていた。
 未だ彼女は、シンデレラコンプレックスから抜けだしきれていない年頃であった。すなわち、いつか目の前に素敵な王子様が現れて、自分を幸せにしてくれるという想像だ。
 そこから抜け出し、現実の男のコに目を向けるのがオトナになる第一歩なのだが、まだ理緒はそこに至っていなかったのだ。 だが、非情な現実が彼女を襲った。
 現在の理緒は、見知らぬ大人達にさらわれ、どこか分からない場所で無理矢理身体を奪われようとしている。
 最高のシチュエーションでしたいと思っていたファーストキスは、最低のシチュエーションで奪われた。
 茂原の手が下方へと伸び、真っ赤なスカートの中へ潜り込んだ。
 すべすべした肌の感触を楽しみつつ、未知の秘奥へと手をさしのべていく。その理緒は、何かに支えを求めていた。無意識のうちに茂原の太い首に腕を回し、細い身体をすり寄せていた。
 思春期の性に対する旺盛な好奇心が、無意識のうちに性行為に対する嫌悪感を上回ったとき、少女の肉体に変化が起こった。
 柔らかな曲線を帯び始めた腰部を押し包む木綿の下着。その布越しに、茂原の指が秘部へと触れたとき、彼の指ははっきりと感じた。わずかだが、その部分が湿り気を帯びているのを。
 さらに強く押す。紺のハイソックスをはいた脚が宙に泳ぐ。 その時茂原は見えるはずのない、木綿の布に広がるシミが見えたような気がした。
 「クチュクチュしてるぞ。意外とエッチだなぁ…」
 そう言いつつ、さらにグリグリと人差し指と中指の2本指でほじる。
 「んふっ…!」
 理緒が白い喉をのけ反らせた。彼女がまだ少女にも関わらずこのような過敏な反応を見せるのは、決して偶然からではない。
 もちろん、理緒が年齢のわりにはその肉体が早熟なこともあるだろう。
 だが、本当のところはそうではない。
 香里がレイプされる光景が目から情報としてインプットされ、縛られたことで肌が縄の感触を覚えた。睡眠薬で眠らされている間に口腔を犯されたことで、嗅覚が男の肌や肉棒の、つまり
牡の匂いを覚えた。
 そして股縄が、身体に快感を覚えさせた。それらの集大成が、居間快感の津波となって理緒を翻弄しているのである。
 乱暴にスカートをまくり上げる。そこには、フリル付きの白い木綿のパンティから、同じように白い太腿がにょきっと生えていた。
 予想通りベチョベチョに濡れた股布越しに、充血した肉芽がルビーの如く存在を主張していた。  
それを指で触れるたびに、理緒が」過剰なほどの反応を見せる。それが面白くて、茂原は何度もそれを試した。
 「…ダメェ…、ああん…」
 十三歳とは思えない色っぽい声。ビデオカメラを使ってその光景を撮っている浅野と河村。そしてその後ろから固唾を飲んで見守っている上村。その場にいる誰もが、理緒の見せる媚態に魅入られていた。
 茂原はそのままたっぷり十分間ほども、少女の唇を貪り続けようやく口を離した。
 その頃には、酸欠状態のせいもあってか、理緒は魂を抜き取られた人形のような状態にされていた。
 口のまわりはベットリと唾液で濡れ、口はだらしなく半開きになっている。あまりにも長時間口中を嬲られつづけたため、あごの感覚がマヒしているためだ。
 茂原は、ベッドの背もたれによりかかるように座ると、理緒の身体を引き寄せた。自分の身体の上に上下逆に乗せ、目の前
に大きく開脚された下半身がくるようにしたのだ。
 魅惑の花園が白い布に覆われたまま、目前に迫っている。何ともいえない甘酸っぱい香りが茂原の鼻をついた。
 キュッと引き締まったお尻は、未だ成熟にはほど遠い。だが、不思議と男の欲望をそそる魅力を放っていた。
 木綿の下着の股布を横にずらすと、幼さを残す淫裂が丸見えになった。ここまでされても、理緒に抵抗の意志は見られない。 心身とも、ボロボロに消耗させられているのだ。
 未知のその部分は、キラキラと陽の光を反射して輝いているように見えた。お尻の肉を持って両側に広げるようにすると、無毛のスリットの上に、ヒクつく薄ピンク色のアヌスが見える。
 茂原は分厚い舌でその2箇所を交互になめた。まるで舌でキレイに清めようとしているかのようだった。
 それは執拗で、それこそ唾液によってふやけてしまうのではないかと長時間続けられた。
 だがそれにも飽きると、茂原はずらしていた股布をねじりあげて紐のようにした。
 それをスリットに沿ってグイグイと強く喰い込ませる。これは劇的な効果があったらしく、理緒は狂ったように悩乱した。
 上村が目で合図をする。
 茂原が身を起こし、ベッドの端に座り直す。それに合わせて、ビデオカメラを構えた浅野・河村がいいアングルを求めて、ベッドの脇へと回り込む。
 茂原が唯一身に着けていたブリーフを脱ぎ捨てた。その股間では、彼の分身が見事なまでに隆々とそそり立っている。
 手の空いている上村と、浅野が理緒の身体を抱え上げた。両側から支え持つようにして、茂原の身体の上へと運んでいく。
 「へへ…、オーライオーライ」
 茂原は、自らのすぐ真上に来た少女の左右の太腿を支え持つと、ゆっくりと狙いを定めていく。ちょうど、肉棒のすぐ真上にスリットが来たとき、それは定まった。
 浅野と上村に目で合図をする。
 ゆっくりと、意識を失った理緒の身体が下降していく。凶悪な肉棒が収まるべき鞘を待っている。そして、さんざんいじり回されてグチョグチョに柔らかくなっているその部分に、先端が触れた。
 グッと左右の肉襞を割って、徐々に肉棒が少女の身体にめり込み始めた。だが、当の理緒は意識を失ったまま、完全に無反応だ。
 (痛くないのかな…)
 (全く反応がない…。妙な感じだ…)
 浅野と上村が小声で囁き合う。  
(まさか、処女じゃないって事はあり得ないが…)
 上村は自分自身の思いつきにギョッとなった。もしそんなことがあれば、理緒の商品価値は全く下落してしまう。
 腰の辺りでわだかまっていたスカートがふわりと舞い落ち、
結合部分を押し隠した。
 茂原は少女の腰に両手を添え、グッと力をこめた。
 「う…、うう…」
 理緒がかすかなうめきをあげた。失神状態から意識を取り戻しつつあるのだ。それとともに、甦ってくるものがある。
 痛覚だ。
 「…い、いやああぁぁっ!痛い、痛い〜!」
 森の中に絶叫が響きわたる。わずかに木々がそよいだ。
 それとともに、ずるりと少女の身体が落下し、さらに淫裂に深く肉棒がめり込んだ。
 さらなる激痛が、少女の神経を駆け巡る。茂原の手が勢い良くフレアスカートの裾をまくり上げた。
 そして、河村のカメラが捉えたのは、無毛のスリットに深々と突き刺さっている血まみれの肉棒だった。
 そもそも理緒のカラダは、まだ男を受け入れる程には成熟していない。それにも関わらず、いや、それだからこそ、上村達は少女を蹂躙することを思いついたのだ。
それが、藤野を苦しめる唯一の手段であるかのように。
 酸鼻な光景がビデオテープに克明に記録されていく。上村は
再び観察者に戻り、浅野はカメラを構えなおした。その前で、いよいよ茂原は本格的に動き始めた。
 「そら、そら、そらぁっ!」
 茂原は威勢のいいかけ声をかけて、激しく腰を突き上げた。 軽量の理緒の身体は激しく上下に揺すぶられる。それとともに少女の悲鳴が激しくなる。つい先刻まで、茂原の愛撫に甘い声を漏らしていた理緒であったが、さすがに幼い膣を蹂躙される苦痛は耐えがたいらしく、快楽の余韻が全て吹っ飛んでしまった感じだ。
 「スゲエ…」 
 河村が思わず呟く。
 あまりの苦痛に、理緒は再び気を失いそうになった。
 それを防ごうとしたのか、興奮した茂原の手がブラウスを掴んで左右に引き裂く。布はたやすく裂け、あっという間に無惨なボロきれと化した。
 そして、幼い膨らみを思い切り強く鷲掴みにする。ほとんど肉のないその部分をひねりつぶすように強く揉みしだく。
 「気絶させないぜ。存分に苦しんでもらわなくちゃ」
 耳元でささやき、なおも激しく突き上げる。
 理緒は満面を汗と涙でくしゃくしゃに歪ませ、瞳を淫らに霞ませていた。
 茂原は相変わらず激しく腰を使い、少女の内臓を滅茶苦茶にかき回していた。その内部では、燃え上がった炎のような欲望が出口を欲して暴れまくっている。
 なるべく長い間、この桃源郷を味わい続けていたいがために、今まで必死にそれをねじ伏せていた。だが、それも限界が来たらしい。
 もっとも効果的な射精の方法を、せっぱ詰まったアタマの中で考える。だが、それはひとつしかなかった。
 「イクぞ!カメラでバッチリ撮れよ!」
 茂原が叫ぶ。
 「おい、ちょっと待…」
 上村が止める間もなく、茂原は激しく総身を震わせていた。誰の目にも、射精の瞬間を迎えたことは明らかだ。その数瞬後、理緒が前方にガックリと首を折り、そのまま失神した。
 「おーし、バッチリ撮ったぜ」
 浅野・河村の2人がカメラを下ろした。
 「しかし、いくら何でも中出しはまずかったんじゃないか?」
 なかばからかい混じりに河村が言う。それを聞いた茂原が不適に笑う。
 「心配なし。見ろよ」
 再び意識を失った理緒の裸身を放り出す。抜き取ったペニスには、しっかりとコンドームが被せてあった。
 「いつの間に…」
 もちろんその先端には放出したばかりの熱い樹液がたまっている。
 「悪いが、カメラもう一度回してくれ。仕上げがまだ残ってる」
 茂原はそう言うと、ベッドの上でうつぶせに寝ている理緒の身体を足先で引っかけ、上向きに寝かせなおした。
 河村がカメラを構え直す。茂原の指示どおり、惚けた理緒の顔をアップで捉える。
 茂原が自分のイチモツに装着したコンドームをゆっくりとはずした。そして、半開きになった理緒の口めがけて中身を垂らす。
 トロリとした牡の体液が、あどけない少女の口に注ぎ込まれていくのを、カメラはしっかりと記録した。最後の一滴まで絞り取る。
 あふれ出た精が、少女の口の端から垂れ落ちていく。
 「よし、ここでエンドマーク、だ」
 茂原のその一言で、撮影は終わりを告げた。



                                  *



 「一体どういうことだ…!犯人は捕まえられず、理緒は戻ってこない…!」
 そう憤慨しているのは藤野である。夕子はショックで貧血を起こして倒れてしまった。
 失態を犯したのは事実なので、国本は黙っていた。 
 「問題はそれだけじゃない、もしこの事件や、夕子のことがマスコミにでも知れたら…」
 「それは大丈夫です。こういう事件の場合は、人質の人命を最尊重して、報道協定を結びますから」
 だが、国本のその言葉は、事実によりあっさり否定された。 その日のうちにマンションにマスコミ各社の報道陣が殺到したのである。
 「こ、これは…?」
 さすがの国本も唖然とした。その数は数十社に及ぶ。ひっきりなしにチャイムが鳴らされ、捜査員の出入りすら満足に出来ない程である。
 「マスコミ各社に、例のビデオが送りつけられたそうです。夕子さんと理緒ちゃん、お2人のプロフィールを添えて…」
 それには、ご丁寧に夕子と理緒の日常のスナップ写真までいっしょに入っていたという。
 藤野 健吾に愛人がいて、二人のあいだには十三歳になる隠し子までいた。
 しかも、その子は現在猟奇的な誘拐事件に巻き込まれているという。たとえ大新聞社が報道協定によって報道を自粛したとしても、各種芸能マスコミがこのスキャンダルをほおっておくはずがない。
 スキャンダルと誘拐事件、相乗効果で必ずマスコミはこの事件を大々的に報道する。藤野の事務所の圧力も通じない。
 上村の狙いはそこにあった。
 特に、D級のマスコミや、いわゆる実話系や写真系の週刊誌は表現がえげつない。
 タダでさえ猟奇的な事件を一層センセーショナルに報道することだろう。
 そして、いったんネタに喰いつくと、この手のマスコミの調査力は、ある意味で警察のそれをしのぐ事がある。
 アッという間に夕子・理緒母娘のマンションの住所は調べ上げられ、記者達が殺到したというわけであった。
 マンションの周辺は記者であふれかえり、事情を知らない近隣住民達は、閑静な住宅地に突如発生した騒ぎにめんくらい、次に困惑した。
 それは、いつかは出てくるであろう藤野への直接取材を狙ったものであった。
 むろん当の藤野にしても、仕事があるのでいつまでもここにとどまっているわけにもいかない。 
 だが、窓からふと相向かいの建物を見ると何やら光るものがある。どうやら、超望遠レンズで狙っているらしい。
 そんな状況であるから、うかつに行動できなかった。だが、今日は夜から仕事があるため、どうしても出かけなくてはならない。
 やむなく、藤野は地下駐車場から出てタクシーを拾うことにした。普段は滅多に人に会うこともないので、藤野にとっては」好都合なため、よく利用していた。
 だが、この日は藤野にとって厄日であったようだ。
 海千山千の記者達の前では、藤野の意図はあっさりと見抜かれ、あっという間に芸能記者たちに取り囲まれてしまう。 
「藤野さん、愛人と隠し子がいらっしゃるという話は本当ですか?」
 「この件について、奥様はご存じですか?」
 「その十三歳になるというお嬢さんが誘拐されたとの事ですが…」
 「そのことについて、今の心境は…?」
 まさに質問責めであった。
 「通してくれ…!どいてくれ!」
 藤野は幾重にも記者達に取り囲まれ、もみくちゃにされていた。
 その様子を、少し離れた場所から冷徹に観察する目があった。 上村である。
 「フッ、いいざまだな。だが、これで終わりじゃない。あんたにはもっと苦しんでもらわなくちゃ…。な、親父」
 上村はそう言い捨てると、くわえていたタバコをその場に吐き捨てて、車に乗り込んだ。
 激しいスキール音を鳴らしながら、その場をあっという間に走り去った。

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